2008-03-30 ミシン Poem 乾き切った土壁の間を赤い道が通っている。 喧噪の世界にはその日暮らし人々が溢れていた。 直射日光を避けた路地裏にはミシンの音が響いていた。 裸足で踏むペダルが言葉に鳴らない悲鳴を上げたが、鈍く光る瞳を持つ少年は瞬きもしない。 彼が手を止めることはなかった。 彼にとって、それは生活だった。 それは喜びだった。 それが生きることの尊厳だった。 向かいの家に住む老婆が玄関口に座り、タバコを吸いながら遠い目でその少年を見つめていた。