ラッセル・クロウからのメッセージ

また、NHK深夜の「アクターズ・スタジオ・インタビュー」を見た。今回のゲストはラッセル・クロウ
まず驚きはラッセル・クロウジョニー・デップショーン・ペンにつぐ愛煙家であること。そして、一番驚いたのが”あの”ラッセル・クロウが「ハリウッドの反逆児」と呼ばれていることだ。
ニュージーランド出身で現在でもロックンローラー。「昔は悪いこともたくさん覚えたものだ」なんて語ってる。「グラディエーター」、「ビューティフル・マインド」と見ていた僕には信じられないくらい以外に感じた。というか、これほど喋っている途中に”ピー”(打ち消し音)が入っている回は初めて見た(笑)
そんな風なのに、登場してからの彼の佇まいはシャイそのもの。彼曰く「大抵の芸能人は、オープンな面があると同時に内向的な面も備えている」らしい。
少しずつノってきたのか、彼は饒舌になっていく。煙草片手に。
俳優という職業について語りだすと、彼の口からは言葉が溢れ出す。ものすごい情熱、ものすごい真面目な姿勢。もし僕が彼の立場だったらつい恥ずかしがって口を濁してしまうだろうことまでも包み隠さず、カッコつけずに喋っていた。
演技学校などに通ったことのない彼は、一時期真剣に学校に通おうかと考えていたらしい。しかし、彼はそんな劣等感を乗り越え自信を掴んだ。自分は実践で学んで来たんだ、と。そして、その意志・自信に負けないくらい彼は仕事を愛し、熱中し、役を研究し尽くした。彼の語る役者論はその実践から学び取ったものであるがゆえに有無を言わせない迫力を持っている。
彼はその情熱だけでなく明晰な頭脳も持っている。彼は「僕は頭が悪いから」なんて謙遜しているが、そこには確実に学業でのそれとは違う実践的な賢さがある。

役を愛することは大切だ。
(ところで、)好きな人の欠点は許せるだろ?同様に役に惚れると(その役柄の持つ)欠点を見逃しがちになる。だから客観的な目も大切なんだ。その欠点こそが個性を生み、人間らしさを生むんだ

特に最後の一文は実践で真剣に悩んだからこそ出る考えだと思う。
これだけ成功した俳優であるのに、彼の役者という仕事への姿勢はとても謙虚だ。驕りのようなものは全く見られない。その実例、彼の言葉を引用しよう。

準備とリサーチは役者の特権だ。それに僕は研究するのが好きでね。これは確実に言えることだが、役作りをきっちりすればそれは必ず画面に現れる。

彼は「L.A.コンフィデンシャル」での大男を演じる際、わざわざ極端に狭い部屋を借りて生活してみた。窮屈に生活することで「環境からはみ出す自分を感じた」らしい。一瞬考えるまで笑ってしまうかもしれないが、行動と心理は関係している。身長や体格によるコンプレックスを考えればわかる。

外見の役作りは早い段階で済ませておくべきだ。そして、それを見直す勇気も必要だ。
肝心なのはスコセッシが言うように決断の早さだ。同時に頭を柔軟にし、間違いはすぐに正すこと。修正することを恥だと思ってはダメだ。やり直す手間を省いたとしたら、その時点で役者失格だ。
自分自身ではなく役に仕えるべきだ

マヌケなようだけどそれが僕のやり方だ。いいショットのためなら肉体的にも奉仕したい。

  • 挑戦したい役柄を聞かれて。

役へのこだわりはない。174人目のハムレットになりたいとも思わないしね。
それよりも現代のシェークスピアを見つけたい。良い脚本家とともに良いものを作りたいんだ。それが僕の仕事だと思っている。

舞台でも映画でも、尊敬する人と仕事をしたい。そこに重きを置くべきだ。人とのつながりはとても大切だよ。

  • 演技に対して監督と意見が食い違ったときの対処について。

映画は監督のものだ。僕は、その監督のために働く。だから、もしその人物と特定の事柄で意見が合わない時には、僕の方が譲る。参加させてもらえるだけで運がいいんだ。

意見は言い合うけどケンカにはならない。監督と口論することが僕の仕事ではないからね。だから、どの監督と組むか、それが重要だ。

莫大な金のかかるものを他人の金で作れる。文句を言っちゃ罰が当たる。本当に恵まれているのさ

  • 撮影現場に入るときの気持ちを聞かれて。

出社するような気持ちにはならないね。いつもワクワクするよ。仕事に行くのは大好きだ。
昔は演技を仕事として語る役者を許せなかった。俳優は自分の天職だと思っていたからね。情熱の欠如のようにとれるそういう言葉を聞くと、自分の信念が揺らぐような気がしていた。だが、いつの日か身の程を知ったよ(笑)

(これは、Rubyのまつもとさんが「Joel on Software」を読んだ際に感じた不快感の原因に通じる話だな)

語り部でいられることをいつも光栄だと思っている。
理想主義だと言われそうだが、それが僕だ。

「それが僕だ」と言った後の一文字に強く結んだ口元が、その強い意志と豊かな情熱を物語っているように感じた。
そして、最後に彼がオスカーを手にした際に行ったスピーチより。このスピーチは僕に向けられたものだと解釈している。みんなも自分自身に対してそう思う権利はある。さて、モチベーションを上げる準備ができただろうか?

ニュージーランドの田舎で育つとオスカー俳優になるなんて夢のまた夢に思える。でも、それが現実となった。
恵まれない環境で奮闘する人たちに言いたい。”夢は叶う”

簡潔であるが、心を動かされるメッセージだ。
 
※蛇足ながら、好きな悪態を聞かれてラッセル・クロウ曰く。

悪態をつく時大切なのは、言葉自体よりその言い方だ。情熱を込めて言わなきゃだめだ。
”ファック・ミー・スウィンギング”

意味は調べないでおこう(笑)